(かなかなさん 会社員 30代 既婚 男性)
小学生の頃、幼馴染の女の子が好きでしたが伝えられずにいました。
6年生のバレンタインの日、「現実にそんなことはない」と理解しつつも、淡い期待を抱きながら迎えた放課後の帰りがけ、靴以外何もない下駄箱を開けて見ながら「現実はこんなもんだ」とガッカリして歩き出しました。
少し歩くと幼馴染の女の子が走って追いかけて来ました。
「一緒に帰ろうよ」
「あ、ああ。いいけど」
他愛もない話をしながら歩いていると幼馴染は聞いてきました。
「そういえばバレンタイン誰かからもらった?」
私は現実はこんなもんさという風に首を横に降ります。
「しょうがないなー。これ、みんなにあげた残りだけど。」
幼馴染はランドセルからチロルチョコを一個だけ取り出して手渡してくれました。
「本当に!ありがとう!めっちゃうれしい。食べていい?」
「うん」
「めっちゃおいしい!ありがとう」
「いいよ。みんなにあげた残りだし。」
そう言い幼馴染は少し恥ずかしそうに笑いました。
大人になってバレンタインの時期にふと思い出して気づきました。あの日、あの子は誰にもバレンタインのチョコをあげてませんでした。
田舎の1クラスの教室、ましてや雪の積もる頃ですので休み時間といえど、外では遊びませんでしたし、教室から出る男女がいれ ばすぐに気づくはずです。あの時の恥ずかしそうな笑顔の意味に気づけていれば、今の私は違った未来を歩いていたのかもしれなとふと思う時があります。
女の子の心がわからなかった淡い思い出です。